著者 椎名 寿発行所 シーナ・ワークス出版 私は手つかずの自然よりも、人と自然の係わりを美しいと思う。人の勤勉な営みの痕跡を撮りたいと思う。人間は自然に打ち砕かれ、また勇気を与えられ立ち上がってきた。それは人間の営為が続く限りずっと繰り返される。 嬉しいことに自然は私たちが忘れていても、季節には花束を届けてくれる。 写真は素晴しい。あの日の空やあの日の風やあの日の笑顔の感触を留めてくれる。そればかりか未来さえ見える気がする。 (本文より)坂を上り坂を下り、小さな町を抜けるたびに、かなしいほど美しかった。あの日の光は、あの日の風は、もう私の写真の中にしかない。撮ったその